私好みの新刊 2023年05月
『みちては ひいて』澤口たまみ/ぶん 山口哲司/え ちいさなかがくのとも
福音館書店
小さな子ども向きだが、浜辺での波の進みぐあいを同じアングルで描いて、変化していく波の進
み具合と高さをそれとなしに表現している。水面が上下する原因については本文ではふれられてい
ない。へんに理屈を述べるより、小さな子どもに「海ってふしぎだな」と感じさせれば十分である。
科学読み物の一つのスタイルと言える。そしてなんといっても子どもに興味あるのは海の生き物で
ある。岩場の間にある水たまり(タイド
んな生き物がいる!」と子ど
さて、本文。最初のページは朝早くの〈暗い海〉の場面から始まる。波は静かで浜辺
手前まで波が来ている図になっている。暗い浜辺の絵である。次の絵は、浜辺の波が前回の図より少
し手前に来ていて波は荒々しくしぶきをあげている。やがて夜明けだ。さらに日が昇ってくると今度
は浜辺の波がぐっと後退していて堤防の先の方
今まで埋もれていた岩場も顔を出
りを興味深くのぞいている。次のページはその水たまりのクローズアップの絵だ。絵は少しデフォメ
ルさい
いでいる。フジツボも見える。この小さな水たまりは生き物であふれかえっている。
次に描かれているのはもう昼過ぎの場面、浜辺の水はまた堤防の中ほどまで来ている。
次ページでは波の勢いも心なしか増している。あの小さな水たまりにも水か入り込んできた。次ページ
はもう日暮れ時、あの岩場も波にかくれて見えなくなった。浜辺はまた
そして、月がのぼる頃、また浜は引き始めた。波打ち際の線が行ったり来たりほぼ一日でくりかえして
いることをこの絵本では描いている。
大人向けにはあとの解説で潮の満ち干の原因や磯での生態についても解説がある。
磯遊びに行く時のタイミングや注意事項なども含めて書かれている。子どもを連れて磯遊びに行く時
の参考になる。
2023年2月 440円
『音をかなでよう』 ガリレオ工房/著 Nozomi/絵 カワイ出版
今までにも同様の工作の類書はたくさん出ているが、本書は「音をかなでよう」に特
化して編集されている点が少し新しいアイデアである。編集も科学あそび、科学工作に
ずっと取り組んでこられた〈ガリレオ工房〉が担っている。小学校低学年から楽しめる
編集になっている。登場人物はツキッキーという手先器用なキツツキくん、それに好奇
心旺盛なあおいさん、音楽はちょっぴり苦手なひなたくん、かわいいもの大すきあんな
ちゃんの4人がそれぞれ疑問をぶつけ合いながら工作が進んでいくというスタイル。
出版社がカワイ楽器だけにまずはオーケストラに使われているいろんな楽器の絵が登場
する。先の4人も楽器の多さにびっくりするが、「お気に入りの楽器をみつけて作っちゃ
おう!〉と好奇心旺盛なあおいさんに引かれて工作を始める。
まずは「せんめんきドラム」。これは小さな子どもがよく風呂場で遊ぶのだが、洗面器
を水面に浮かせたり持ち上げたりして音の変化を楽しむことや、スプーンでたたいたり
する点が変化に富んでいる。次は「あきばこタンバリン」。ワッシャーなどを空き箱の
横に穴を開けてそこに取り着けるなどこれはちょっと手の込んだ工作になっている。
まあ低学年児もできるか。次は「スプーン・ウィンドチャイム」。ハンガーにいろんな
形のスプーンをぶら下げるが、つり糸がこんがらがってもつれるとやっかい。次は
「竹ぐしカリンバ」。これは木の板の上でも出来るが箱などの上に置くと共鳴していい
音がする。オルゴールなどと同じ原理。竹ぐしをしっかり止めることがこの工作のみ
そなので、大人に手伝ってもらうといい。次は「モノコード」。これもしっかり蝶ねじ
を止めないといけないので大人の力を借りるといい。次は、作った〈楽器〉を使って
みんなで楽しく演奏したている場面。ある程度音階が作れると楽しい。次は「ストロー
ぶえ」。これはよく小学生などが遊ぶ工作だが、吹き口を作るのにライターを使うのは
ちょっと注意が必要。むしろ次ページの「ストロー・トロンボーン」がお薦め。太さの
違うストローを伸び縮みさせてある程度の音階もできる。次ページの「ストロー・パン
フルート」や「ホース・トランペット」もおもしろい。
2022年12月 1,430円